「にっぽん丸」体験記

伊豆七島2泊3日クルージング

2009年7月
東京都八王子市在住 永町 匡世 様

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 2009年夏、両親と私は、客船にっぽん丸の甲板にいた。青い空と白い雲。目の前には三宅島が見える。

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 半年前、父が糖尿病を発症した。異常は目に現れた。視界がせばまり、ものが二重に見えるというのだ。「目が見えなくなるかもしれない」。折にふれ父はつぶやいていた。

 父は、定年退職後、ボランティア活動で、忙しい日々を過ごしていた。が、視力の衰えから、徐々に家にひきこもるようになった。私は母と相談して、父を外出させるために、この船旅を申し込んだ。にっぽん丸2泊3日の伊豆七島クルージング。

 甲板で、配られたシャンパンを飲みながら、出港を迎えた。対岸の人々にテープを投げる行為は、三人とも初めてだ。私は父に、二つも三つもテープを渡した。父は戸惑ったような笑顔で、遠くにポーンと放った。砲丸投げの選手みたいに力強くかっこよくて、私は驚いてしまった。母は父を、カメラでパシャパシャ撮っていた。

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食べることが大好きな私たちは、食事も楽しみの一つだった。目にも鮮やかな料理が次々と運ばれてくる。とてもおいしい。窓の外は、今まさに夕日が沈むところだ。海面がオレンジ色に染まる。だんだん空が暗くなり、テーブルの上の蝋燭がひときわ明るく光った。

 船内では様々なイベントが目白押しだ。とにかく全部参加しよう。父の気持ちを外に向かわせたい。私はスケジュールを立てた。

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お酢の新たな魅力を発見した「酢ムリエセミナー」、イタリア最古の薬局が紹介する「ハーブ」の講座。デューク更家のウォーキングセミナー。夜のデッキでの星空教室。野口雨情の世界へと誘う夜のコンサート。アフタヌーンティーでの弦楽四重奏の生演奏、デッキで食べた酢フトクリーム、父がにっぽん丸せんべいをゲットした、カジノゲーム。オレンジ色の救命胴衣をつけての避難訓練、そして、三人で新調した、フォーマルウェア。船内の大階段で、色々なポーズで順番に写真を撮ったのも、照れくさい思い出だ。

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父と母が一番輝いていたのはダンスだ。客船にっぽん丸のダンスホール。ミラーボールがきらきらと輝き、バンドがノリのいい音楽を奏でている。たくさんのカップルがステップを踏むなか、父と母も楽しそうに、ルンバを踊っていた。両親の趣味は社交ダンス。いつか、船のダンスホールで踊ってみたい、と母が言っていたのを覚えている。

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私は両親の専属カメラマン。とにかくシャッターをきりまくった。ファインダーの中の両親は生き生きとしていて、私はとても嬉しかった。

朝、船上での目覚め。船室の丸窓から見える海はただ青く、白い波が美しく舞う。父はその眺めを何枚も写真に撮っていた。「今年の暑中見舞いに使おう」。父の心はもう外に向かっている。

私たち親子にとって、一生忘れられない、かけがえのない旅になった。「また行きたいね」。父と母が言った。また行こう。今度は母の好きなハワイに。

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